図1 生息域内保全と域外保全の関係

千葉県ニホンイシガメ保護対策協議会(以下、当協議会)では取り組んでいる対策について、まずは用語の説明をいたします。

ある生き物が絶滅の危機にさらされている場合、まず最初は減少要因を特定します。そしてその現象要因を除去していく事が重要になってきます。二ホンイシガメの場合、河川改修をやめる、生活史に影響がないような改修の方法を検討する、アライグマやクサガメを除去するなどが考えられます。そして生息個体数が増加してくるのを待ちます。減少要因を取り除くことの困難さに加え、長い時間がかかることが多いです。そこで生息地から安全な場所へ野生個体を保護し、個体数を増やすことも同時並行で行うことで、その種の絶滅を回避する事、これを生息域外保全と言います。生息域内・生息域外保全を同時並行で行う事が重要です。

当協議会の活動紹介

生息域内保全

淡水性カメ類の広域での分布調査

当協議会設立年の2013年時点のニホンイシガメの生息状況を把握するため、比較的広域で調査をしました。このことにより、保全を優先すべき地域を絞り込みました。

地域住民の方とともにニホンイシガメの生息状況を調査している様子
図2 地域住民の方とともにニホンイシガメの生息状況を調査している様子
淡水性カメ類捕獲のための罠の設置の様子
図3 淡水性カメ類捕獲のための罠の設置の様子

 

アライグマ捕獲用罠かけの説明会・現地講習会の実施

ニホンイシガメの急激な減少要因となっているアライグマによる捕食被害を減少させるために、アライグマ捕獲用の罠を設置し、捕獲する担い手を増やす目的で、アライグマ捕獲用罠かけの説明会と現地講習会を実施しました。

アライグマ捕獲罠設置の様子と捕獲された個体
図4 アライグマ捕獲罠設置の様子と捕獲された個体
現地講習会の様子①
図5 現地講習会の様子①
現地講習会の様子②
図6  現地講習会の様子②

 

アライグマ痕跡調査・被害聞き取り調査

アライグマがどこにいるのか、そこにイシガメも生息しているのかを調べる調査も実施しました。

調査項目
図7 調査項目
地域住民へ配布した調査のおねがい(チラシの一部)
図8 地域住民へ配布した調査のおねがい(チラシの一部)

生息域外保全:施設での取組

鴨川シーワールド:近隣水系個体群の飼育、教育・普及啓発

・イシガメの飼育・繁殖技術の確立

・千葉県におけるイシガメの現状についての普及啓発

図9 鴨川シーワールドでの普及啓発展示の様子

生息域外・域内保全の連携生息地での保全・野生復帰に向けた取組

越冬場所の環境の解明に向けた調査・研究

アライグマによる捕食被害は越冬期に集中している(小菅  私信)

◎越冬期調査においてイシガメの捕獲場所の環境を子細に記録→アライグマ対策として生息環境の整備に反映

越冬期調査の様子
図11 越冬期調査の様子

 

イシガメ、クサガメ、雑種個体の遺伝子解析

◎クサガメとの雑種形成のメカニズムの解明

◎遺伝子浸透の度合いなどの解明

→域外保全個体として確保する野生個体の管理計画に反映

雑種個体
図12 雑種個体